ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの
魅力とは?
今注目のトスカーナ州のワイン

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ1

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノが大ブームを巻き起こしている。イタリアを代表する赤ワインで、その濃厚な味わいと高い熟成能力で世界中のワイン愛好家を魅了してきたが、近年はそれに優美さが加わった。良いヴィンテージが続いていることもあり、専門誌でも高得点を連発し、世界的ファインワインとしての地位を固めつつある。熱い注目を集めるブルネッロ・ディ・モンタルチーノをご紹介しよう。

目次

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノとは

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ2

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、イタリア中部トスカーナ州のモンタルチーノ村で生産される赤ワインで、最高格付けであるD.O.C.G.(原産地呼称保証統制)に認定されている。同じ産地から弟分にあたるD.O.C.(原産地呼称統制)ロッソ・ディ・モンタルチーノも造られる。両方とも使用される品種はサンジョヴェーゼ100%だ。

サンジョヴェーゼは栽培される場所により生まれるワインの特徴が大いに異なる。テロワールを明確に反映する品種なのである。同じトスカーナ州のサンジョヴェーゼ主体で造られるワインでも、山に近い産地であるキアンティ・クラッシコはフレッシュでやや細身なワインであるのに対して、トスカーナ南部に位置するモンタルチーノはより温暖な気候で、ティレニア海からの海風の影響を受けるため、アルコール度数が高く、スケールの大きなサンジョヴェーゼが生まれる。日照に恵まれていて、ブドウは完璧に成熟するが、南に位置する標高1,738mのアミアータ山からの冷たい風のおかげで夜の温度が下がるため、酸とアロマが保持される。産地であるモンタルチーノ村(標高564m)の周りに広がる丘陵地帯は、標高、傾斜、土壌、微気候の変化に富み、多様なテロワールが存在する。冷涼でガレストロ土壌(石の混じった土壌)が多い北地区では繊細でミネラリーなワインが生まれるし、温暖で標高が低く、粘土が多くなる南地区では果実味豊かで力強いワインが生まれる。伝統的に複数の畑のブドウをブレンドしてブルネッロ・ディ・モンタルチーノを造り、良い年にはブルネッロ・ディ・モンタルチーノ・リゼルヴァ、そして若い樹からロッソ・ディ・モンタルチーノを造る生産者が多かったが、最近は単一畑ブルネッロでテロワールを明確に表現しようとする生産者が増えてきた。それによりブルネッロ・ディ・モンタルチーノは優れたテロワールワインとしての存在感を高め、ブルゴーニュワイン愛好家の心をも捉えつつある。

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの生産地区は31,200ヘクタールと広いが、ブドウ畑は僅か3,500ヘクタール(うちブルネッロのブドウ畑は2,100ヘクタール)で、産地の11%でしかない。産地の多くが森林に覆われ、野性的な自然が残り、生物多様性に富んでいる。その美しく歴史ある農村風景は2004年に世界遺産に登録された。

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この地では伝統的にサンジョヴェーゼ・グロッソというサンジョヴェーゼのクローンが栽培されてきた。房と実が大きいクローンで、色は濃くないが、フローラルなアロマが魅力的で、タンニンが厳格で酸がしっかりとしたフレッシュなワインを生む。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの生みの親とされるビオンディ・サンティ家が選別したBBS11クローンはその代表である。一方、より色が濃く、果実味豊かで、甘いタンニンを持つ近代的クローンを使う生産者も多く、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの表情をさらに多様なものにしている。

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは雄大でパワフルなワインで、破格の長期熟成能力を誇る。その力強さを誇示する濃厚なワインが一世を風靡した時代もあったが、今はより優美で、繊細なスタイルのワインが増えた。熟成に使われる樽のアロマも控えめになった。それにより豊潤な果実味だけでなく、スミレ、ハーブ、腐葉土などの複雑なアロマが感じられるようになり、デリケートな地中海的ニュアンスを持つ魅力的なワインが増えた。

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノはイタリアのD.O.C.G.の中でも最も知名度が高いブランドで、国際的名声が高く、生産量の70%が輸出される。その魅力に惹かれて他州や外国からの資本参入も相次いでいて、産地は活気づいている。世界で最も注目されているワインの一つなのである。

歴史

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ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの歴史は意外に新しい。昔モンタルチーノで有名だったのはモスカデッロを使って造られる少し甘い白ワインだった。辛口赤ワインであるブルネッロ・ディ・モンタルチーノの原型が出来上がったのは19世紀半ばである。20世紀に入りビオンディ・サンティの名声が高まり、長期熟成向き赤ワインとしてのブルネッロ・ディ・モンタルチーノの名も知られるようになったが、生産量としては多くなかった。1966年にD.O.C.に認められ、翌年に協会が設立された時のメンバーは25名で、ブドウ畑は僅か64ヘクタールでしかなかった。1980年にD.O.C.G.に昇格した段階でもそれほど大きな呼称ではなかった。そんなモンタルチーノに大きな変革をもたらしたのは1970年代末に創設されたバンフィ社だ。アメリカ資本の巨大な投資によるプロジェクトは近代的栽培、醸造をモンタルチーノにもたらし、品質を向上させた。1980年代にバンフィが行った数々の研究(クローン選別、土壌分析、様々な仕立て法など)はモンタルチーノに科学に基づくワイン造りを根付かせた。バンフィのもう一つの重要な功績はブルネッロ・ディ・モンタルチーノの名を国際市場で広めたことだ。ビオンディ・サンティはある種のイタリアワイン愛好家には神話的名声を誇っていたが、幅広い消費者に知られたワインではなかったし、ビオンディ・サンティも知られるための努力をしなかった。「知る人ぞ知る」ワインでしかなかったのだ。それに対してバンフィは世界中にブルネッロ・ディ・モンタルチーノを配給し、その魅力を伝える努力を惜しまなかった。それらの積み重ねが実を結び、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノが世界的にブレークしたのは偉大な1990ヴィンテージがきっかけだ。1990ヴィンテージがリリースされた1995年以降は世界中でブルネッロ・ディ・モンタルチーノの人気が高まった。生産量も急速に増加し、生産者数も増えた。2001、2006、2010、2016など偉大なヴィンテージがリリースされる度に、専門誌が与える高得点が話題になり、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの知名度は高まった。今では瓶詰を行う生産者が200を超え、年間生産量も900万本に到達した。まさにイタリアを代表する赤ワインに成長したのである。

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バンフィが独自開発した発酵槽「ホライゾンシステム」。発酵槽の側面はオーク材、同槽の上下部面にはステンレスを導入して、側面から酸素とオークのタンニンを自然供給しながら、ステンレス部分で発酵中の温度管理、ルモンタージュを可能とする設備。

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの特徴

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ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、最低でも5年間の熟成期間が義務付けられており、イタリアで最も長い熟成を経てリリースされる赤ワインである。その熟成期間はバローロより1年、バルバレスコより2年長い。5年のうち最低2年はオーク樽で熟成させる必要がある。この長期熟成こそがブルネッロ・ディ・モンタルチーノの大きな特徴で、複雑なアロマと深みのある味わいを生む。サンジョヴェーゼの厳格なタンニンは長期熟成によりなめらかになり、包み込むような味わいが生まれる。落ち着いた味わいで、長い余韻を楽しむことができる。

ロッソ・ディ・モンタルチーノとの違い

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モンタルチーノの産地は長期熟成に適したブルネッロ・ディ・モンタルチーノを生むが、同時に若いサンジョヴェーゼも魅力的である。それを伝えてくれるのがロッソ・ディ・モンタルチーノだ。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノが複雑で、深遠で、偉大なワインであるのに対して、ロッソ・ディ・モンタルチーノはフレッシュで、若々しく、直截な果実味を楽しめ、非常に飲みやすい。同じ畑からサンジョヴェーゼ100%で造られるワインだが、個性が全く異なる。5年間の熟成が義務付けられているブルネッロ・ディ・モンタルチーノに対して、ロッソ・ディ・モンタルチーノは収穫翌年の9月1日からリリースすることができる。樽熟成は義務付けられていないが、大樽で熟成させる生産者が多い。樹齢の高い古木をブルネッロ・ディ・モンタルチーノに使い、樹齢の低い若木をロッソ・ディ・モンタルチーノに使うということが多い。軽やかでチャーミングな味わいを持つロッソ・ディ・モンタルチーノは幅広い食事に合うので、レストランや家庭で重宝されている。ロッソ・ディ・モンタルチーノの年間生産量は450万本で、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの約半分だ。

おすすめのモンタルチーノ銘柄

数多くの生産者が存在する中で、特におすすめしたいモンタルチーノの銘柄をいくつかご紹介する。ワイナリーの断固たる哲学と優れた技術が生み出す、個性豊かなワインたちを楽しんでいただきたい。

バンフィ/ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ

おすすめのブルネッロ・ディ・モンタルチーノ1

バンフィ
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ
/750ml

10,696円 (税込)

商品コード:20129

世界中にブルネッロ・ディ・モンタルチーノの魅力を伝えた偉大な定番ワイン。ダークチェリー、プラム、桑の実の香りに、バニラ、スパイス、カカオなどの繊細なアロマが混ざる。味わいはなめらかで、深みがあり、堅固。抜群の安定感を誇るワインで、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノを知るためには最適の一本。

バンフィ/ロッソ・ディ・モンタルチーノ

おすすめのブルネッロ・ディ・モンタルチーノ2

バンフィ
ロッソ・ディ・モンタルチーノ
/750ml

6,232円 (税込)

商品コード:7769

イタリアのレストランで愛される大ベストセラー。赤い果実、チェリー、スミレのみずみずしい香り。純粋な果実味としなやかな味わい。食卓で真価を発揮するワイン。フレンチオーク小樽と大樽で10~12ヶ月熟成させることで、かなり複雑なロッソ・ディ・モンタルチーノに仕上げている。

バンフィ/“ポッジョ・アッレ・ムーラ”ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ

おすすめのブルネッロ・ディ・モンタルチーノ3

バンフィ
“ポッジョ・アローロ”ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ・リゼルヴァ
/750ml

18,673円 (税込)

商品コード:7767

バンフィ社が創業以来行ってきたサンジョヴェーゼのクローン選別、土壌分析、最適な栽培などの研究の結晶であるブルネッロ・ディ・モンタルチーノ。フレンチオーク小樽とスラヴォニアオークの大樽で2年間熟成。プラム、チェリー、シナモン、バニラ、リコリスの魅惑的な香りで、ビロードのようになめらかな味わい。近代的スタイルのブルネッロ・ディ・モンタルチーノだが、どこか温かさを感じさせる味わい。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの新たな地平線を切り開いたワイン。

バンフィ/ “ポッジョ・アローロ”ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ・リゼルヴァ

おすすめのブルネッロ・ディ・モンタルチーノ4

バンフィ
“ポッジョ・アローロ”ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ・リゼルヴァ
/750ml

40,130円 (税込)

商品コード:20121

1985年のファーストヴィンテージ以降、優良ヴィンテージにのみ造られるバンフィ社の最高峰ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ・リゼルヴァ。フレンチオーク小樽熟成。ブルーベリー、プラム、タバコ、コーヒーの香りが複雑で、ミントやローズマリーのアロマがフレッシュさを与える。味わいは深遠かつ雄大で、余韻が果てしなく続く。

おすすめの飲み方

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ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのような偉大なワインを楽しむ時は、グラスや温度にも注意を払いたい。グラスはチューリップ型(ボルドータイプ)を使用することが多いが、エレガントなブルネッロ・ディ・モンタルチーノならバルーン型(ブルゴーニュタイプ)で華やかなアロマを楽しんでもいいだろう。重要なことは大きめのグラスを使用することだ。長期熟成により形成される重層的なアロマとなめらかな味わいを満喫するには広口のグラスをおすすめしたい。適切温度は18度前後であるが、近年のブルネッロ・ディ・モンタルチーノはタンニンが繊細になってきているので、15度ぐらいからスタートして、徐々に温度が上がるにつれてアロマが開くのを楽しむというのも素晴らしい経験である。 

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノを楽しむためのペアリング

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ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは肉料理との相性が抜群だ。地元ではビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ(炭火焼きのTボーンステーキ。キアニーナ牛を使用する)が最高の組み合わせとされている。トスカーナでよく食される炭火焼きの羊、豚、サルシッチャなどにもよく合う。日本なら焼き鳥もいいだろう。牛肉の赤ワイン煮込み、ビーフシチュー、ローストビーフなどと楽しんでもよい。トスカーナ名産のペコリーノ(羊乳チーズ)を長期熟成させたものとも相性がいい。オッソブーコ(仔牛のすね肉の煮込み)、豚のロースト、仔牛のローストなどのイタリアンの定番料理との組み合わせも絶品だ。中華料理との相性も良く、北京ダック、青椒肉絲、回鍋肉など幅広くマッチする。

まとめ

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モンタルチーノを訪れると驚かされるのはワイン観光客の多さだ。世界中からワイン愛好家がワインと美食を求めてモンタルチーノを訪問する。この30年でモンタルチーノの小さな村にワインショップやワインバーが数多くオープンし、レストランもホテルも常に満員だ。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは世界のワインラバーの憧れの的である。近年は若い世代の活躍も目立ち、ワインもさらに洗練されたスタイルになっていて、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは輝かしい新時代を迎えつつある。

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